日本酒ものがたり | 飯沼本家

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日本酒ものがたり
第七話「きのえねomoya」オープンに寄せて①

飯沼本家のひとびと

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令和4年3月11日、「酒と二十四節気料理 きのえねomoya」がオープンした。


飯沼本家敷地内、門を入った奥に位置するこの建物は、長年オーナーである飯沼家の自宅として、またその一部は帳場(事務所)として使われていた。「商家」といわれる建物にありがちだが、母屋は敷地全体が見渡せる場所に位置している事が多い。「奥」で生活するオーナーが常に場内を管理できるように、ということらしい。現在では表に向いているガラス戸は曇りガラスで中からも外からも双方うかがえないようになっているが、私が嫁した当時、ガラスは透明で、外が良く見えるようになっていた。もちろん外からも中の様子は丸見えである。耐えかねた私は先代が避暑に行っている間にガラスを入れ替えて真ん中のガラスを曇りガラスにしてしまった。お叱りを受けるかと思っていたが、義父も私に気を遣ってか、何も言われなかった。それ以外にも「プライベート」というワードはどこにあるのか、という家の造りには本当に辟易したものだ。台所は蔵人の食堂とガラス戸一枚で仕切られているだけで、6時から始まる食事の間中蔵人の話し声はまる聞こえだ。生ごみを捨てに行ったりお米を取りに行ったり、すべて食堂を通らなければならない。今思えば懐かしい場面だけれど、まだ結婚してすぐの私にとっては苦痛以外の何物でもなかったように思う。


周りがアスファルトで囲まれた家の夏の暑さは格別だった。エアコンを入れようとしたけれどつける場所がない。無理やりつけてみたけれどほとんど効かない。だって、部屋は区切られていないのだから。唯一台所につけたエアコンはよく働いて、夏になると台所が一番人気の場所だった。晴れた冬の日は日差しがある外のほうが過ごしやすく、今から思うとずいぶんと健康的に過ごしていたな、と感心する。


朝になると家中の雨戸を開け、夕方には閉める。雨戸の枚数は14枚。たまに離れを開けた時にはさらに16枚の雨戸の開け閉めが追加される。これに慣れるまでにはずいぶん時間がかかった。雨戸のささくれで棘が刺さるのは日常茶飯事である。


ある時、いつも通りに炊いたご飯がうまく炊けず、あれ?と思った。


何と、炊飯器の水の目盛りの右と左で1合の差があったのだ。たった20センチぐらいの距離で1センチ近くの傾きがあった。これは衝撃、と、すぐに義母に話したところ、涼しい顔で「そうなのよ、土台が腐っているからねぇ」


ここから母屋問題は私の中でどんどん膨らんでいく。


 


written by イイヌマ ミキコ


 


 

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